舌の快楽

原稿の締切その他で追い詰められていることもあって、妻と子が妻の実家に帰ったあと、舌の快楽に走ることにする。

土曜日は久々にイル・ラメリーノに一人で行く。ランチは2500円になっていた。大将は顔を覚えていてくれた。牛肉のカルパッチョと赤ピーマンのリゾット。牛肉のカルパッチョは野菜の味がちゃんとするサラダの下に肉厚の牛肉が敷き詰められていて美味。もちろんパルメジャーノ・レジャーノがかかっている。

赤ピーマンのリゾットも格別というわけではないが、ちゃんと仕事がしている味。お米に芯が残っている。日本人向けにイタリア料理をアレンジするのではなく、あくまでもイタリアの味を日本人に届けるという姿勢。デザートは果物と青カビチーズの蜂蜜がけ。エスプレッソ。

会計のときに「久しぶりに来られたけど、相変わらずおいしかったです」といったら、照れてくれるのはいいのだが「そうですかあ?」という自己否定の答えはないだろう大将。深読みしてしまうぞ。ランチのクオリティは自分としては不本意で、自分の味を慕ってくれるならディナーに来い、という意味だったりして。いや、その通りなのだが。

土曜日夜、実家で夕食を食べたら、父親が三浦屋オリジナルブレンドで煎れてくれたアイスコーヒーがおいしかった。深煎りのせいで、普通に飲むと苦いと父親は文句を言っていたが、たしかにこれはアイスコーヒーにしたほうがおいしいかもしれない。

そんなわけで日曜日、自宅のコーヒー豆が切れていたこともあり、アイスコーヒーが無性に飲みたくなり、いつもの自家焙煎の店に行く。日曜日は定休日だった。近くに新しくできたということもあって、贔屓にしたかったのだが、今まで二回買って二回ともそんなにおいしくなかった。これは縁がなかったのかと思う。店で煎れてくれるアイスコーヒーは普通にうまいのだが。

しかたがないので、中道通りの「珈琲 散歩」に。ケニアブレンドのアイスコーヒーを一杯ずつ頼む。美味なり。どちらかというとケニアのほうがおいしかったかな。いずれにせよ、業務用紙パックアイスコーヒーの味とは大違い。

ここは目の前で焙煎してくれる。ブラジル下坂農場のピーベリーボルボンを選んで浅煎りにしてもらう。そのあとでダッチコーヒーを作ろうと思っていたことを思い出し、店の主人に勧められたカルモシモサカを深煎りで。水と一緒に持ってこられた豆の説明が書いてあるチラシを読んでいたら、ピーベリーボルボンも深煎りがおすすめのようだ。でも最近深煎りの苦いコーヒーばかり飲んでいたので、浅煎りのものがどうしても飲みたかったのだよ。

焙煎を待つ間、落語ゼミに備えて、『栄光の上方落語』の読み直し。このCD全集に収録された70分近い松鶴の「らくだ」は貴重だが、ベストだとは思わないなあ。先週のゼミで「はめもの」を間違えて「鳴りもの」といっていたことに気づいて愕然とする。まだ勉強が足りない。