和倉温泉旅行一日目

実家の父母とともに家族旅行、今年度は娘の幼稚園の春休みを待ってこの時期となった。自分のペースとしては入試の終わる2月半ばごろに行くのがいちばんよいのだが、幼稚園を休ませるようなバカ親にはなりたくないからな。

和倉温泉に決めてからセゾンのツアーデスクで旅館を見繕ってもらったのだが、加賀屋という巨大な存在があるのを知らなかった。こちらの希望としてはこじんまりとした宿がよい、というものだったので、そもそも候補にすらなっていなかった。昨年塩素くさい温泉に入って以来大きな旅館は敬遠したい気持ちに変わりはないが、一度ぐらい加賀屋には泊まってもよかったかも。そして全国の主立った温泉地を訪問したいという私の遠大な計画を考えると、次に和倉温泉をたずねるのは十年先か二十年先になりそうだ。

能登空港からレンタカーを使って和倉温泉に行く。羽田ー能登間はANAのみ一日往復四便の運航。どうも車の運転というと怖じ気づくので少しでも近い能登空港を選んだが、小松空港でもよかったかも。

朝は吉祥寺駅から空港バス。10:05発なので8:00発のバスでよかったのだが、万一遅延した場合のことを考えて7:00発のバスに乗車。あにはからんや、45分で着いてしまった。空港内のウェストパークカフェで朝食をとる。私はBLTサンドウィッチ。値段高めなれどおいしかった。手荷物検査後セゾンのエアポートラウンジで休もうと思っていたが、能登行きの飛行機の搭乗口がまったく反対側にあることを知る。signetを使える身分というか境遇には絶対になれそうもないからなあ。エアポートラウンジへ向かう通路から逆戻り。妻と娘はその場を走っていた電動カートに乗り込む。これがなかったら娘がむずかって大変なところだった。

能登空港からトヨタレンタカーでカローラアクシオを借りる。前日にインターネットで下調べしておいたかき浜に立寄り、昼食をとる。ウーロン茶を頼んで一人前4200円とはこの地にしてはよい値段ではないかと思うが、大ぶりのアルミのボウルに山盛りにされて出てきた生ガキの量に圧倒される。大人四人が長方形になっている火鉢を挟んで向かい合わせに座り、炭火で焼いていく。殻がはぜることがあるというので娘は火鉢の脇に座らされるものの、私たちの牡蠣がはぜることはなかった。もっとも周りではかなり大きな音を立てて飛び散っていたが。

殻が乾いて煙が出てくるようになったら食べごろだと言われたが、むしろ殻がぱっくり開くまで熱しておいたほうが殻をこじ開ける手間もないし、焼き加減としてもちょうどよいことを発見。まだ半分も食べ終わっていない頃に熱々のカキフライが供される。こちらは一人四個。生ガキにあたって以来カキを苦手とする妻はこちらのほうがよかったようだ。焼き牡蠣のほうは、半分も食べると父も母ももちろん妻も娘も食傷気味で、太る太ると母親に難詰されながら私が一人で平らげる。不思議とおなかに入る。その後は別室にうつって牡蠣ご飯。やや御飯がべとつき気味か。これも私以外の三人はみな残す。自家製の漬物がうまかった。

予定ではそのまま宿に行くつもりだったが、娘が水族館に行きたいと一人で大合唱。朝早かったので昼間になれば寝てくれるだろうと期待していたのだが、興奮しきっていて寝ない。しかたがないので明日行く予定だったのとじま水族館に行く。到着したのは15時近くで、閉館するのが17時なのでそんなに見られないのに。能登島にある水族館なので、美しいツインブリッジのとを通過。15時からのマリンガールの餌付けショーを見て、その後海遊館で購入したものと同じイルカのメダルが欲しいと大泣きする娘を一家でなだめつつ、16時からのイルカ・アシカショーを見る。この頃までにはすっかり機嫌がなおっていた娘はその後人がほとんどいない海の自然生態館にあった、水槽と同じ材質のアクリルでできたオブジェに執心。滑り台がわりにして遊び続ける。

帰りは能登島大橋を通って今回の宿泊場所である旅亭はまなすに到着。こじんまりとした旅館だが海沿いに面しているわけではないため、窓越しに海を見るといっても部分的に見えるだけだ。娘は到着して早々、玄関に蹲踞している黒いラブラドール、シークに夢中。宿の人たちに内心いやがられているだろうに、三日間にわたってシークにかまい続ける。「おすわり」なんて言っても四歳の子供の知らない子供の言うことを聞くわけなかろうに、といってももちろん通じない。

部屋で休んでいる父、母、妻をよそに、私は娘を連れてすぐに大浴場に向かう。温泉は大変よかった。大浴場と、それに隣接する小さな露天風呂だけしかないとか、脱衣所にはすでにモーターが焼き切れたのではないかと思われるぐらい弱々しい温風しか吹き出さないドライヤーが一台しかないとか、欲をいえばきりがないが、二階の部屋から階段をおりてロビーを通り過ぎればすぐに大浴場の入口だし、なによりも湯の質がよい。飲んでみるとかなり濃い塩分を含んでいることがわかるが、人間の体に合っているような気がする。妻は風邪気味だったが、お湯に入ったあと布団に入って一汗かいたといっていた。

その後両親たちの部屋で食事。能登の新鮮な魚介類が売りの旅館だけに、大変おいしい。娘にはお子様ランチが出されたが、これも手を抜いていない。しかし娘は相変わらず食べない。海老フライの衣をとって海老だけ食べさせたり一苦労だ。

食事が終わった後、私たちの部屋に戻り、布団に入って娘に『ぞうのババール』を読んでやるが、疲れのためすでに意識がとびとびになっており、書いてもいないことを読んでしまう。その度に娘に「違うでしょう!」と突っ込みをいれられる。いつもの調子で私がふざけていると思っているようだが、お父さんは本当に自分の意識に入り込んできたことと絵本に書いてあることとの区別がつかなくなっているのだよ。読み終わるとそのまま眠りにつく。