誰か俺をとめてれく


とタイトルを思わず間違えてしまうほど、最近 iTunes Music Store でダウンロード購入を繰り返している。この一週間は毎日一枚のペースだ。


親が子供のためにアカウントを作っている、というような場合は、アローアンス(すごく中途半端な表記だな。なんで「アラウワンス」ではないのだろうか)の設定で限度額を決められるらしいのだが、自分用にアローアンスを作る、ということができないものか。


今日は購入を迷っていた Fred Astaire's Finest Hours を結局買ってしまう。一昨日購入した I Get a Kick Out of You--The Cole Porter Songbook, Vol. 2iPod Shuffle で聞いていたら(これは冒頭の Louis Armstrong の "I Get a Kick Out of You" がお目当てだった)、突然アステアの "Night and Day" が聞こえてきて思わず息を呑んでしまったからだ。


ロジャースとコンビを組んでいたRKO時代のアステアを愛することにかけては人後に落ちないという自負のある私だが、自分が好きなのはアステアのダンス(とくに膝から下ね!)とか表情とか台詞回しだと思っていた。


"The Way You Look Tonight" と "They Can't Take That Away From Me" は英語の歌詞がついている曲でいちばん好きな二曲なのだが、それはたとえば Shall We Dance? でアステアがロジャースに見せる、「切ない」という気持ちが顔に書いてあるような表情とセットになっているからであって、アステアの声が素晴らしい、ということではないと思っていた。


だから、 割とつまらないと思っている Gay Divorcee の "NIght and Day" なんかはいままでほとんど興味がなかったのだ。


ところが今回、 iPod Shuffle でアステアのヴォーカルをはじめて聞いた。イヤフォンは、ずっと使っている Etymotic Research 社の ER-6。これは本当に素直な音を出すので愛用しているのだが、耳元で聞くと、ささやくように歌われるアステアの声質は快楽そのものに変わってしまう。


村上龍村上春樹が書くようなニューエイジがかった比喩で申し訳ないが、ER-6でアステアの声を聞いてしまうと、頭の中の機械のスイッチが「カチッ」と音を立てて切り替わり、その瞬間に世界の見えかたが変わってしまうのだ。


同じ音源を研究室に持っていって、AirMac Express + Sony JSD-7 + Wharfedale DIAMOND VI という組み合わせで聞いても、(頭にすでにその体験を織り込み済みだから多少違うのだが)それほど感動しない。(これはJSD-7が悪い、という話もありますが、研究室にそんな高いオーディオ置けないからな)。


ウォークマン世代ど真ん中でありながら、ウォークマンの音質の悪さとヘッドフォンの機能性の低さにどうしても馴染めないものを感じて、買っては一週間で放り出し、を繰り返していた私だが、そして最近では iPod の重さに閉口して日常生活ではほとんど使っていなかった私だが、iPod Shuffle + ER-6 は私の長年の認識と習慣を変えつつある。


で、話を戻すと、アステアのヴォーカル入りのCDってAmazonとかで探すと死ぬほどあるのだな〜。私も一枚か二枚は持っていたが、上記のような理由でさほどCDでアステアの声を聞くということに興味をさほど持てなかったために、真剣に探すことはなかった。


たくさんある、ということはいい加減なコンピレーションものも混じっている、ということだ。この Finest Hours というアルバムも、そういう匂いがした。さすがにそこら辺の勘は私もあるし、試聴できるから "They Can't Take That Way From Me" のアレンジが気にくわない、とかいろいろわかる。


だから昨日は、Amazonで評判のよい Complete London Session というのを注文して、iTunes Music Store で唯一買うことのできるこのアルバムを購入するのはやめようと決意したのだった。


ところが Complete London Session の納期が3-5週間後ということがわかって我慢できなくなった。というわけで論文書いて、家に帰ろうとしていたところについ魔が差してポチッとダウンロード購入のボタンを押してしまい、ついでにこんな駄文も書いているというわけだ。


肝心の内容だが、研究室の粗悪なオーディオ環境ではやはり評価できない。たぶんER-6 で聞いても同じだな…。


そんなわけで時計の針がもう三時半を回っちゃったね、帰ります。