細野晴臣に話しかけられたよ(夢の中で)のこと


毎年7月にリンカーンセンターで行われるリンカーンセンターフェスティバルは、BAMのNext Wave Festivalとならんで、一流の海外劇団が招聘されるのでニューヨーク滞在中は毎年楽しみにしていた。しかし帰国してからは全くご無沙汰である。というのもこの時期は大学の試験期間中にあたっており、学期末と言うこともあってきわめて忙しく、出国するのはほぼ不可能に近かったからだ。


だが今年はロバート・ウィルソンと太陽劇団の新作が上演される。これは何が何でも行かねばなるまいと思って、発売開始日の昨日、リンカーンセンターのサイトにアクセスしてチケットを予約した。ウィルソンの新作、インドネシア叙事詩をもとにしたI La Galigoは、あの巨大なニューヨークステートシアターが会場で、なんと一階席が150ドルもしたが、わざわざ日本から行くのだからよい席でみたいので思いきって買った。他のチケット(Bill IrwinとKathleen Turnerが主演のWho's Afraid of Virginia Woolf?とか、これも楽しみ)もあわせて全部で500ドル強、ほぼ6万円近くになったがしかたあるまい。


その夜、夢を見た。


I La Galigoはなぜか日本で上演されていた。しかもさまざまな日本人のアーチストが出演者にくわわっており、その中には細野晴臣もいた。正確には覚えていないが、細野さんの台詞は、彼のかつて作った曲のタイトルをもじったもので、それを聞いた私はぷっと吹き出した。ところが私以外の誰もそのことがわからなかったのか、私の笑い声だけが会場で聞こえた。細野さんは演技を続けながらちらと私のほうを見た。


よく見ると、会場はちゃんとした劇場ではなく、ファッションショーが行われるような、天井まで吹き抜けになった狭い倉庫のようなところで、観客は百人前後しかいない。私は開演時刻に遅刻しそうだったので(これはいつものことだ)、自転車で駆けつけ(なぜだ?近いのか?)、会場前に乗り捨てておいた。そこへ会場の係員をどうやら兼任しているらしい細野さんがやってきて(彼の出番はすんだらしい)、「あそこで笑ってくれたのは日比野さんだけだったよ」(お互いに知り合いらしい)とあの独特の笑顔を見せながら言ったあと、自転車を会場前に放置しているのはまずいから、ちゃんと会場際の道路に置いておいてくれ、と言って帰っていった。


謎だらけの夢だ。ウィルソンの新作を楽しみにしていることだけはわかるな。