BAM Harvey Theater

外から見るとたんなるふつうのビル、中にはいると古い劇場であるハーヴェイ・シアターにRichard Maxwell演出のHenry IV, Part Iを見に行く。今年で21回目を迎えるBrooklyn Academy of MusicのNext Wave Festival の一シリーズだ。


ハーヴェイシアターの最寄駅は4/5 LineのNevin St.で、86th St.から約30分。地下鉄で景色が変らないからか、体感時間はもっと長いのだけれど、なにしろ急行の4/5 Lineだと、86th St.から42th St.まで二駅、6分ぐらい。
harveytheatre.jpg
7:30開演のところを6:30ぐらいに着く。夕食は劇場近くで食べようと思ったのと、しばらくぶりなので劇場の場所がわからないといけないとと思って早めに寮を出たのだ。地図もあったし、薄ぼんやりとだが地理も覚えていたので、すぐ劇場が見つかる。このフェスティヴァルで見る五本分のチケットをピックアップし、
しばらくあたりをぶらぶらする。なんと動く看板ができていた。movingsignboard.jpg
しかし五、六年前と同様、この地区は寂れており、BAMの二つの劇場とMark Morris Dance Centerが目立つぐらいで、ファーストフード以外のレストランはほとんど見当たらない。そのうちの一軒、Cambodian Cusineに入る。名前の通り、カンボジア料理の店。Fulton St.の通り沿いにあり、BAMのもう一つの劇場、Howard Gilman Opera Houseからまっすぐ五分ぐらいのところにある。cambodiancusine.jpg
よくわからなかったのでチキンヌードルを頼んだら、焼きそばみたいなものが出てきた。ニューヨークの店としては、味はすごくまずいというわけではないが、MSG(味の素)が効き過ぎている。麺ものびすぎ。一緒に頼んだ豆乳は甘くてちょっと閉口した。向いのインド料理の店のほうがよかったかも。

戻って劇場に入り、案内されると、最前列のど真ん中であることが判明。さらに出演者の中に、CUNYで一緒に学んだRoger Babbがいることがわかる。演出家のマックスウェルというのははじめてでニューヨークの実験演劇だというのであくの強いものを予想していたが、まるきり違う。あとでNew York Timesを読んでわかったのだが、わざと棒読みにして感情を込めないで演じさせるのが彼のスタイルらしい。素人および素人に毛が生えた俳優も三、四人。素人独特の所在のなさを醸し出していて、きわめて間の抜けたシェイクスピア。しかもフォルスタッフの説く戦場での処世訓(「名誉とはなんだ?名ばかりのものだ」とかね)がこの国にも広がっている厭戦ムードとマッチしていて、私は極めて面白かったが、BAMでこんなものを見せられると思っていなかった観客も多かったらしく、上演中次々席を立ち、終ってみれば三分の一ぐらいは空席。私の右隣の女性二人組は間抜けさ加減にみんなが笑うのをみて"I don't get it."と囁きあっていたが帰り、左隣のおじさんは途中から原作を読み始める。
帰りはかつて一緒に学んだミンジェイと再会。博論のプロポーザルに苦労して昨日やっと書き上げたところだという彼はすごく疲れていた。心なしか頭も薄くなったような気も。再会を祝して14丁目のスタバでお話。