Public Image Limited, "This is not a long song" from Live in Tokyo

ゼミ合宿のコンパはカラオケ付で、三年生のなかにたいへん巧い人たちが数人いてびっくりした。私はといえば、「君にジュースを買ってあげる」から「嫁とロック」へ、さらに「リンダリンダ」まで歌って、なんちゃってパンクバンドをやってたという話をしたら Sex Pistolsを歌えというリクエストももらったのだが、知らない若者のほうが多いだろうと思ってさすがにやめておいた。

まあ、そんなことも無意識に引っかかってたはずだが、今日、学内資金の研究会の発表をようやく終えて、夏休みの宿題は6つのうち2つがようやく片付き、多少心が晴れたこともあり、いろいろ音楽を聴いているうちに頭の中でPILの "This is not a love song" が鳴り出した。しかも Live in Tokyo 収録の、テンポが速いやつ。CDは昔は持っていたのだが、売ってしまったのか、手元にはもうない。早速Youtubeで探したら、なんと映像つきのがあった。

軽い気持ちで視聴しはじめたが、舞台俳優よろしく観客の花束に大げさにキスしてみせる冒頭の仕草で早速打ちのめされた。すべてを達観したようなジョン・ライドンの道化ぶりがとてつもなく格好よい。おどけているが卑屈ではなく、たくさんのものを失っているが絶望はしておらず、たいへんキュートだ。

東京公演は1983年だそうだから、56年生まれのライドンは27歳!? こんなに老成した27歳がいたのか。20歳にならずして世界のロックシーンの台風の目となった男にとって、希代の詐欺師であるマルコム・マクラーレンをマネージャーとして相手にしなければならなかった男にとって、人生はあっという間に過ぎていったのだなあ。

もとはレーザーディスクで、DVDも91年に出ていたようだが、今日までこんな映像が残っているなんて知らなかった。それは私にとってよいことだった。おそらく若い頃にはライドンのこの「軽み」はわからなかっただろう。AmazonのCDのレビューでライドンの態度が「金のためにやっていて投げやりだ」と評していたものがあったが、そうではないのだ。自分に才能があることはわかっていて、人も評価してくれている、それでも人生には満たされないものがあり、その喪失感は何をもってしても埋められないという現実を生きるとはどういうことか、をこの映像は如実に示している。

…そんなことを43歳になった翌日に考えた。