「青春の夢いまいづこ」

ニューヨークは異常気象。ハロウィンだというのに気温は十度以上あり、上着一枚でも汗をかく始末。

1時からの上映だったが、開始直前に「映写技師が遅刻してる」と係員がアナウンス。今日からアメリカは冬時間に移行したのだが、それを忘れていたのだったら一時間早く来るはずなのに遅れるとは…。昨晩の「生まれては見たけれど」と同じ無声映画の伴奏ピアニスト、ペーターなんとかが観客からリクエストを募ったり自分で好きな曲を弾いたりして、代理の映写技師が来るまで30分ほど時間を稼ぐ。あんまりうまくなかったけど、せっかく好意で弾いてくれているんだからもっと熱心に聴いてやればいいのに、一部の人を除けば明らかに気のない態度。曲は「トロイメライ」とか「煙が目にしみる」とか。

来たというアナウンスがあり、待っていると映写室から"I'm not asking question...pay.."という言葉が部分的に聞こえる。「この分の給料は貰えるのか」とかなんとか言っているのかなあと
想像をたくましくする。

映画は「東京の女」それから戦後の「彼岸花」(1958)にも出演する江川宇礼男が主役。ちなみに江川の本名はウィリー・メラーで、父親はドイツ人らしい。道理でバタ臭い顔してるよなあ。
ベーカリー兼喫茶店で働いている田中絹代演じるお繁と恋に落ちるが、会社経営をしていた父親が急死し大学を退学して社長になる。昭和初期の就職難の時代が背景で、大学の遊び仲間を自分の会社に入れてやるが、そのうちの一人斎木太一郎(斉藤達雄)がお繁と婚約しているのを知らず、お繁に婚約を申し込むのだと斎木に言ってしまう。云々という話。残りの友人は二人。若い笠智衆が出ていて結構いい男に撮れている。大山健二という俳優は伊集院光そっくり。

社長と社員の関係になったとたん、昔の友情はどこへやら、卑屈に媚びる友人たちに対して江川は怒るのだが、最後に「自分たちが悪かった」と謝る彼らもまた、社長の機嫌を損ねないように詫びているだけのようにもとれ、意味深な終わりかたである。

チケットの半券もってたら次回は無料と言われる。得した。

夜はABTのMASTER's Program. Symphonic Variations/Diversion of Angels, Pillar of Fire, Raymonda )Grand Pas Classique)の四本立て。プティパ振付の「ライモンダ」をのぞけば、いずれも40-50年代に振り付けられた、その意味では古くさい作品だが、久しぶりのバレエは結構楽しめた。7時半にはじまったのだが、2回の休憩を挟んだので劇場を出たのは10時過ぎ。結構長かったのだが、体感時間はもっと短かった。

「シンフォニック・ヴァリエーション」はアシュトン振付で1946年初演。前半はダンサーたちの動作が緩慢でリズムを感じさせず、どうしようかと思ったが後半持ち直す。カルロス・ロペスがいい。体にバネが入っているように、リズムに機敏に反応する。
「天使の気晴らし」はマーサ・グラハムの振付。サンドラ・ブラウンがよい。足を高く上げる時、普通のダンサーは膝を曲げてから腰まで上げるのだが、ブラウンは一気に上がる。バランス感覚も相当いい。
「火の柱」はチューダーの振付。ジュリー・ケントがよい。私は技術力のあるダンサーが好きなのだが、この人だけは技術以前の圧倒的な表現力。とくにこの作品のようにみじめな女、悲しみに沈む女をやらせたら天下一品。大きな目をいっぱいに見開いて悲しみを表す。
「ライモンダ」のカルロス・アコスタは元英国ロイヤルバレエ団プリンシパル。跳躍がすごい。ただしバネを利かせすぎてリズムに合わないところがあった。

azusa.JPE
IKEAのレストランでの浜垣姉。着ているヴェストはハロウィン仕様のものだったらしいのだが、私は気づかずじまい。あとで電話があって「ロバートとレストランに食事しに行ったら回りの人がみんな私のヴェストに気づいて褒めてくれたのに、ロバートは全然気づかなかった」と文句をきく。すいません、私も気づきませんでした…。